あなたの「やりたい」に、
会社が投資する仕組みです。
乗富鉄工所の人事制度は「未来投資型人事制度」といいます。名前のとおり、過去を採点する制度ではなく、未来に投資する制度です。根っこにあるのは、会社のVALUE「やりたいを叶える」。特徴は、三つだけです。
部長も課長もいません。あるのは、担う役割の大きさを表す1〜6の「役割等級」と、一人ひとりを支える「サポーター」だけです。
会社が決めて渡すのではありません。「自分はこういう役割を担いたい」「来年これをやるから、この額を」——本人の申し出から、すべてが始まります。
会社は、これまでの成果を採点しているのではありません。これから担ってくれる役割に、先に投資するかどうかを判断しています。「自分に投資してください」と、自分から会社にプレゼンテーションする——それが、この制度のいちばん根本にある考え方です。
「こういう役割を担いたい」
「来年これをやる。だからこの額を」
役割等級そのものが変わる
=給料の枠も変わる
いまの役割等級の範囲内で
翌年の昇給を決める
あなたの未来に
先に投資する
この制度で決めることは、突きつめると2つです。どんな役割を担うか。そして、給料をいくらにするか。
この2つは、別々ではありません。役割等級が、給料の枠を決めます。毎年の昇給は、その枠の中で決まります。枠そのものを変えたいときと、枠の中で決めるときとで、進む先が違います。それぞれに、くわしいページがあります。
※賞与(ボーナス)は、この2つの話し合いでは決めません。役割等級に応じて、会社の利益から自動的に配分されます。くわしくは「未来投資会議について」のページへ。
この制度のあちこちに登場する「サポーター」について、ここでまとめておきます。

正直に言うと、僕は「人が人を評価することなんて、本当はできない」と思っています。
かつてのうちの会社は、上がってくる文字だけの評価シートを見ながら、役員だけで昇給を決めていました。でも、上司との相性もある。見えていない頑張りもある。続けていけば、なんとなく年功序列に戻っていく。誰が悪いのでもなく、人が人を採点するという仕組みそのものに、無理があると思ったんです。
そもそも、人の働きというのは、数字に落とし込める部分のほうが小さい。現場の空気を変えてくれる人がいる。若手が自然と頼る人がいる。困ったとき、最初に動いてくれる人がいる。そういう大事なところほど、数字には出てきません。だから、点数で決めるのをやめて、時間をかけて話し合う形にしました。それが、成長対話です。
もうひとつ、現実の問題がありました。いろんな役割を持った人が増えて、上司が一人で全員を管理することが、もうできなくなっていた。でもよく考えたら、これは当たり前のことなんですよね。プレイヤーとして優秀だけど、采配は苦手な人がいる。役職はないけれど、人を見るのが得意な人がいる。「課長」という箱をつくって、そこに全部できる人を当てはめようとしても、そんなスーパーマンはこの会社にはいません。僕も含めて。
だったら、箱に人を合わせるのをやめよう。一人ひとりが「私はこういう役割をやります」と申し出て、会社がそれを引き受ける形にしよう。そうやって生まれたのが、この制度です。
そしてもうひとつ、僕が一番大事だと思っていることがあります。
やりたいことなんて、そんなにはっきり分かっているものではないと思うんです。決めたことがその通りになるとも限らないし、うまくいかないことの理由が、その人自身にあるとも限らない。
それでも、言葉にしようとして考えている時間には、意味があると思っています。うまくまとまらなくていい。考えているうちに、中途半端にでも、「ああ、自分はこういうことがやりたかったのかもしれない」と分かってくることがある。それはひとりで考えていても、なかなか出てこない。だからこの制度では、サポーターと話しながら書いて、対話の中で形にしていく進め方にしました。
自分の役割を自分で申し出て、自分の給料を自分で提案する。正直、面倒くさい制度だと思います。ただ、自分で決めたことだと思えていると、その仕事が少しずつ自分のものになっていきます。僕自身、そうでした。それは、自分の人生を自分らしく生きることと、たぶん地続きです。
だから私たちは、評価をやめて、投資にしました。過去を採点するのではなく、これからのあなたに、会社が先に賭ける。
あなたの「やりたい」に、会社は投資します。
株式会社乗富鉄工所
代表取締役 乘冨賢蔵
いいえ。役割等級は、進まなければいけない階段ではなく、自分がいま会社のどこにいるのかを知るための地図です。自分の道を、同じ場所で深く歩き続ける人生も、まったく正しいと考えています。
まだ見つかっていなくて、かまいません。1級・2級のうちは「目の前の仕事が、やりたくないことではない」くらいで十分だと考えています。やりたいことは、探して見つけるものというより、働いているうちに、後から見えてくることが多いものです。あせらないでください。
会社の都合で、一度決まった役割等級や給料を下げることはありません。そのうえで、体調のこと、家族のこと、人生のいろいろな時期に合わせて、自分から役割を軽くする調整はできます。そしてまた戻りたくなったら、いつでも戻れます。
違います。サポーターは評価する人ではなく、一緒に考える人です。指示を出す立場でも、査定する立場でもありません。
だれがいくら上がったかは、本人と会議のメンバーだけが知っています。この制度で話すべきなのは、自分の貢献と、自分の額だからです。他の人の額とくらべ始めると、この制度は「評価」の世界に戻ってしまいます。
ひとりで書き上げる必要はありません。サポーターと話し合いながら、少しずつ書き進めてください。うまく言葉にできなくてもかまいません。書きながら、話しながら、見えてくるものがあります。
通るとは限りません。役割は成長対話を、給料は未来投資会議を通ります。「言った者勝ち」にはなりません。ただし、削る一方の場でもありません。「その貢献なら、もっと上げていい」という上方向の修正も、実際に起きています。希望と違う結果になったときは、必ず理由が返ってきます。
一律の決まりはありません。これまでの経験や実績、「この会社でどういう役割を担いたいか」という本人の希望、そして会社の状況を合わせて決めます。
ただ、順番としては等級を先に決めるのではありません。どこかの部署に配属することにはなりますが、それ以上に大事なのは、その人に合った役割を、本人と一緒にデザインすることです。何を担ってもらうかが決まって、それから、その役割の大きさに応じて等級が決まります。
新卒で入った方は、まわりに助けてもらいながら自分の仕事を持てるようになるところからなので、多くの場合は1級からのスタートになります。ただしこれも決まりではありません。すでに実績や高い専門性を持って入る方もいますし、その場合は、担ってもらう役割に応じた等級から始まります。
入ってからも同じです。役割が変わっていけば、等級も変わっていきます。
まったく見ていない、ということはありません。ただ、返ってくる場所が少し違います。
正直なところ、過去の成果を「この人がどれだけ貢献したか」に正確に切り分けるのは、とても難しいと思っています。大きな案件が決まったとき、そこには営業も、設計も、現場も、これまで会社が積み上げてきた信用も関わっています。それを何割ずつと分けることはできません。無理に分けようとすると、声の大きい人が有利になるだけになってしまいます。だから、過去の成果そのものに点数をつけることはしません。
そのかわり、日ごろの働きは、別の形で効いてきます。まわりから「あの人はそれだけのことをやっている」と見られている人は、当然、サポーターたちにもそう見えています。だから、その人が「これをやりたい」と言ったときに、「あの人が言うなら、できそうだ」と受け取ってもらえる。同じ提案でも、それまでの積み重ねによって、通り方が変わってきます。
つまり、これまでの頑張りは点数ではなく、信頼として返ってきます。そしてその信頼が、次に何を任せてもらえるかを決めていきます。

この制度は、私たちがゼロから発明したものではありません。先行するいろいろな会社の制度から学んで、自分たちの会社に合う形に組み直したものです。学ばせてもらった中には、私たちよりずっと思いきった仕組みの会社もあります。等級のような枠組みを持たず、すべてを対話だけで決めていく。そこまで振り切れる会社を、心から尊敬しています。そのうえで、私たちは私たちの状況の中で考えて、いまの形にしました。
この制度をつくったのは、「働くこと」と「自分らしく生きること」が、別々になってしまわないようにしたいからです。会社にいる自分と、それ以外の自分が、別人にならなくていい会社にしたい。そう考えているのは、たぶん私たちだけではないと思います。だからまだ途中のものですが、あえてこのまま公開することにしました。完成形ではありませんし、会社の状況に合わせてこれからも見直していきます。読んでいて「それは違うんじゃないか」と思うところもあると思います。それでも、途中のまま外に出しておくほうが、意味があると思いました。
人事制度に正解はないと思っています。会社の規模も、仕事の中身も、これまでの歴史も違えば、合う形は変わる。だからこれはあくまで乗富鉄工所のやり方で、そのまま真似してうまくいくかどうかは分かりません。それでも、私たちが先を行く会社から学ばせてもらったように、この記録が、どこかの誰かの何かになればうれしいです。それがどこまでできるのか、まだ答えはわかりません。それでも、小さな実践が、社会を変えていくと信じています。